2017/18 連邦政府予算案

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2017/18 連邦政府予算案

1. 個人税制について

 

1―1. 2017年5月9日以降に取得された居住用賃貸不動産について

居住用賃貸不動産の設備や備品の減価償却費の控除は、当該投資者が実際に支払ったものに限定されます。

2017年7月1日より、居住用賃貸不動産の設備や備品の減価償却費の控除は、当該投資者が実際に支払ったものに限定され、不動産購入時に既に備わっているものについては、控除が認められなくなります。通常、「居住用賃貸不動産の設備や備品」とは住宅設備機器を指し、自動食洗器や天井扇など、物件からの取り外しが容易なものを指します。(以下、居住用賃貸不動産の設備や備品を「設備や備品」といいます。)

この新ルールは、既存投資物件に不利益がでないように、過去に遡っては適用されません。具体的には以下のように将来に向かって適用されます。

  • 2017年5月9日の時点で既に備わっている設備や備品については、現在の所有者が不動産を手放すまで、あるいは設備や備品が耐用年数を超えるまでは、現行通り、減価償却の控除が認められます。また、2017年5月9日午後7時30分(オーストラリア東部標準時間)までに売買契約が成立した居住用賃貸不動産についても同様に減価償却が認められます。

 

  • 設備や備品で、2017年5月9日以降に購入したものは、その耐用年数の期間に減価償却費の控除を申請することができます。しかしながら、この物件が売却された場合、次の所有者は、これらの設備や備品について、たとえ耐用年数が過ぎていなくても減価償却することができません。物件購入時にすでに備え付けの設備や備品の取得については、次の所有者が将来この物件を売却するときに、キャピタル・ゲイン税のコストベース(所有経費)に含めることで反映されます。

この改正は、物件の新たな所有者が備え付けの設備や備品を実際の資産価値以上に計上して、減価償却することを回避するためのものです。

 

1-2. 賃貸不動産に関連した交通費控除の廃止

2017年7月1日より、賃貸不動産の視察や維持、家賃の回収といった賃貸不動産に関連する交通費を賃貸収入から控除することができなくなります。

これは、多くの納税者が交通費の事業割合分を正しく計算していなかったり、私用の旅行費用まで控除申請してしまっていることに対する措置です。しかしながら、投資物件の管理に関連して不動産業者等の第三者へ支払う費用までが、この措置のために控除できなくなってしまうということではありません。

 

2. メディケア・レビーについて

 

2-1. メディケア・レビーの引き上げ

2019年7月1日より、メディケア・レビーは、現行の所得課税対象額の2%から2.5%へ引き上げられます。また、フリンジ・ベネフィット税のように、個人所得税最高税率に連動している税についても税率が引き上げられます。低所得者については、独身者、年金受給者、高齢者、家族等それぞれのカテゴリー別に所得基準が設定されており、納税者の所得がその基準に満たない場合、メディケア・レビーは所得に応じて減税されます。また、メディケア受給資格のない納税者などに対しても、現行のメディケア・レビー課税免除措置が引き続き適用されます。

 

3. 中小企業について

 

3-1. 中小企業向け資産即時償却制度の延長

中小企業向け資産即時償却制度は、年間総売上高が1,000万豪ドル未満の中小企業を対象としており、2万豪ドル未満で取得した資産を即時償却できます。この制度は2017年6月30日に終了でしたが、さらに1年間(2018年6月30日まで)延長されることになりました。これにより、2万豪ドル未満で取得した資産を即時償却することができます。但し、その資産は、2018年6月30日までに使用を開始されているか、または取り付けが完了して使用可能な状態でなければなりません。

 

2万豪ドル以上で取得した資産は即時償却できません。しかし、償却資産のグループ分けの必要がない「単一減価償却プール(simplified depreciation pool)」に、引き続き割り当てることができ、その償却率は初年度が15%、それ以降は30%です。プール残高が2018会計年度中に2万豪ドル未満となった場合にも、即時償却することができます。

 

また、単一減価償却法の採用を取りやめた中小企業が、5年以内に再度この償却方法を採用することを認めないとした税法があります。しかしながら、この税法は、現在まで施行されておらず、さらに2018年6月30日まで、その施行が引き続き見合わされます。

 

2018年7月1日以降は、即時償却できる資産が$1,000以下に戻されます。単一減価償却プール残高の即時償却についても同様です。

 

4. スーパーアニュエーション

 

4-1. 「ファースト・ホーム・スーパーアニュエーション・セーバー」制度

    (First home superannuation saver scheme)

連邦政府は、住宅の取得可能性を高める政策を打ち出しました。初回住宅購入者に対して、スーパーアニュエーション(退職年金)に住宅購入資金を任意拠出することを認め、退職年金の積立金と同じ税優遇を与えます。具体的な政策内容は、以下の通りです。

 

  • 2017年7月1日より、初回住宅購入希望者は、3万豪ドル(年間の上限は1万5000豪ドル)を上限として、住宅購入用に退職年金へ任意拠出できます。但し、この拠出額は、Concessional Capの上限額またはNon-Concessional Cap(NCC)の上限額以下でなければなりません。この拠出金及びその運用益には、15%の軽減税率が適用されています
  • 2018年7月1日より、上記の拠出金とその運用から発生した見なし利益を、初回の住宅購入の頭金にあてることができます。退職年金から引き出されたこの資金は課税されます。その税率は、納税者のそれぞれの課税所得に応じた税区分の最高税率から税控除分の30%を差し引いて計算されます。NCCから引き出された資金に課税はありません。

 

拠出金とその運用益に対する既存の税優遇制度を組み合わせることで、初回住宅購入用の預金額を容易に増やすことができ、初回住宅購入のインセンティブとなります。また、夫婦の場合も、どちらか一人ではなく両者ともにこの制度の恩恵を受けることができます。

 

4-2. 老後の住宅ダウンサイジングにおける自宅売却時の売上金について

65歳以上であれば、住居のダウンサイジングのために自宅を売却した際に、その売上金のうち、30万豪ドルを上限として退職年金に税引後拠出できます。

この拠出は、既存のルールや拠出額の制限のもとで認められた拠出に加えて、さらに追認可されたもので、年齢テスト(age test)及び職業テスト(work test)が免除されます。また、スーパーアニュエーションの残高を引き出せる入金額の制限が160万豪ドルなっていますが、この制限からも免除されます。

 

この税優遇制度の適用対象となるのは、10年以上「主たる居住地」であった物件で、夫婦それぞれが、同一の物件に対して本制度を利用できます。

本制度により、住居のダウンサイジングが高齢者にとって手の届くものとなり、家族が増えていく若い世帯向けの一戸建て住宅の供給が促進されると期待されています。

 

5. GSTについて

 

5-1. 不動産売買に係るGST納付状況の改善

現行の税法では、不動産価格にGSTが含まれており、デベロッパーにGST納付の義務があります。しかしながら、建築費についての仮払GSTを控除申請したにもかかわらず、仮受GSTの納付についてはそれを怠っているデベロッパーが見受けられます。そのため、2018年7月1日以降、豪州国税局(ATO)へのGSTの納付は、新築住宅や新しい分譲地の購入者が決済の時に行うことになります。

ただ、ほとんどの不動産購入が不動産専門弁護士を仲介して行われるため、購入者側には、この改正に伴う影響はあまりないと考えられます。

 

5-2.  デジタル通貨もGST処理については「通貨」と同じ扱いに

2017年7月1日より、ビットコインといったデジタル通貨もGST処理に関しては、「通貨」として取り扱われます。現在、デジタル通貨は税務上「無形資産」(つまり「物」)として扱われています。その結果、実質的にGSTが二重課税されてしまいます。(デジタル通貨を購入した時と、デジタル通貨を利用してGST対象商品を購入した時の2回)。したがって、本改正により、デジタル通貨の購入はGSTの課税対象から外されます。

 

6. 外国人投資家に影響のある税改正について

 

6-1. 2017年5月9日から適用の税改正

(a)キャピタルゲイン税

外国人投資家に関するキャピタルゲイン税制について、以下の通りに改正されます。

  • 2017年5月9日午後7時30分(オーストラリア東部標準時間)以降、オーストラリアの非居住者と一時居住者は「キャピタルゲイン税の主たる住居についての税免除(CGT main residence exemption)」を受けることができなくなります。但し、この日以前から所有している不動産については、2019年6月30日までこの税控除の適用が認められます。

 

  • 2017年5月9日午後7時30分(オーストラリア東部標準時間)以降、「主要な資産テストprincipal asset test)」が外国人投資家に義務付けられます。このテストは、間接投資を通じて保有するオーストラリアの不動産持分について定めた基準に従ったものです。これまで、外国人投資家は、株式や子会社等を通して間接的にオーストラリアの不動産を保有することにより、キャピタルゲイン税を回避することができました。しかし、本改正により、こういった税回避ができなくなります。

 

(b)外国人投資家の所有で6か月以上空き家の賃貸不動産に賦課金を徴収

外国人投資家が所有する賃貸不動産で、一年のうち6カ月以上空き家にしていた物件に対し、少なくとも年5,000豪ドルの賦課金が徴収されます。

本改正は、2017年5月9日午後7時30分(オーストラリア東部標準時間)以降に、賃貸不動産への海外投資申請をした外国人投資家に適用されます。

この賦課金は、外国人投資家が賃貸不動産の取得時に課せられる投資申請の手数料と同等のもので、毎年徴収されます。

この改正により、外国人投資家が保有する賃貸不動産が実際に貸し出されるようになり、オーストラリアの賃貸住宅市場に出回る物件数が増加することが期待されています。

 

(c)外国人投資家による新規開発地の所有を50%までに制限

新規住宅開発に関する免除証明(New Dwelling Exemption Certificates)の発行条件に、外国人投資家の当該開発地の所有率を最大50%までとする制限が設けられます。

この制限は、2017年5月9日午後7時30分(オーストラリア東部標準時間)以降に申請された新規住宅開発に関する免除証明から適用されます。

 

新規住宅開発に関する免除証明はデベロッパーに発行されるもので、当該開発地の外国人への売却を事前に承認されていることを証明するものです。したがって、この免除証明をもつデベロッパーから当該開発地を購入する場合、外国人購入者は自分自身で外国人投資許可を取得する必要がありません。なお、これまでの免除証明には、当該開発地の購入者のうち外国人投資家が占める割合についての制限はありませんでした。

本改正は、最低限の新規住宅開発地が、オーストラリア国民にも行き渡るようにすることを目的としています。

 

6-2. 2017年7月1日以降に適用の税改正

非居住者の不動産売却などに関するキャピタルゲイン税の源泉徴収制

(FRCGW: Foreign Resident CGT Withholding)

2017年7月1日以降、非居住者の不動産売却などに関するキャピタルゲイン税の源泉徴収税率が10%から12.5%へと引き上げられ、源泉徴収の対象となる売却額が$200万豪ドルから$75万豪ドルへと引き下げられました。

 

7.  MIT (Managed Investment Trusts) を利用した住宅取得政策

 

連邦政府は、集団投資信託(MIT: Managed Investment Trusts)による低価格住宅への投資を認めることで、その市場への投資を促進させる方針です。MITが税優遇を受けるためには、その投資物件が、少なくとも10年間は賃貸住宅として、市場価格よりも低い賃料にて供給される必要があります。

 

MITは、不動産を購入したり、住宅の建設や再開発をすることができます。しかし、MITの課税所得のうち少なくとも80%以上は、低価格住宅からの収入でなければなりません。またMITの賃貸物件は、民間賃貸住宅市場よりも低い賃料にて中低所得者層に貸し出されなければなりません。本改正は、2017年7月1日に開始の会計年度から適用されます。

 

外国人投資家の居住する国が、オーストラリアと有効な租税情報交換協定に締結している場合、MITに関する源泉徴収制度のもとでは、その国の外国人投資家に対して軽減税率が適用されます。通常、オーストラリアの非居住者である投資家には、MITからの配当金に対して、最終源泉徴収税率である15%が適用されます。

 

低価格住宅への投資以外からの収入分(20%)は、所得税法にあるMITに関する現行規程の範囲内で行われる投資活動からの収入になります。もし、低価格住宅への投資からの収入が、MITの課税所得総額の80%を下回ってしまった場合、その会計年度は、非居住者の投資家に対して30%の源泉徴収税が課せられます。

 

不動産の売却処分により発生した純キャピタルゲイン(net capital gain)には、30%の源泉徴収税が課せられます。この対象となる不動産は、低い賃料の賃貸物件として所有していた不動産で、その所有期間が10年以下のものです。

 

8. 課税支払報告システムを配送業者と清掃業者にも適用

 

2018年7月1日より、課税支払報告制度(TPRS: the Taxable Payments Reporting System)が、配送業者と清掃業者にも適用されます。

 

TPRSは、会計の透明性を高めるための制度です。すでに建物管理業者や建設業者に対して適用されており、この業界での税務コンプライアンスが大幅に改善されています。TPRSは、業者に対して、契約社員への個々の支払額および年間支払額の総額をATOに報告することを義務付けています。

契約社員は、業者からの受取額を給与としてATOに別個に申告しています。したがって、TPRSの適用により、配送業界と清掃業界においても、支払額と受取額の整合性を確認することができるようになります。課税支払報告の最初の報告期限日が2019年8月ですので、新たにTPRSが適用される業者は、2018年7月1日以降に関連の情報を収集し、制度対応への準備をしておく必要があります。

 

9. 売上圧縮技術及び売上圧縮ソフトウェアの禁止

 

連邦政府は、POSシステム(販売時点管理)用の売上圧縮技術および圧縮ソフトウェアの製造や供給、所持、使用、販売の禁止に向けて、法整備に動き出しました。本法は、英国女王の裁可を得た日から効力を発します。

売上圧縮技術や圧縮ソフトウェアを用いることで、POSシステムの記録から特定の電子取引を選択して、それを痕跡なしに消去することができます。この操作により、売上収入を過少計上できるようになります。したがって、消去された取引からの収入やその収入に対して本来支払われるべき税金について、ATOには報告されません。

 

注)上記の記事は一般的な情報提供を目的としており、法的なアドバイスではありませんのでご了承ください。もし個別のアドバイスが必要な場合は専門家にご相談ください

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