当事務所の法人クライアント様の多くが、事業年度末に税務上の位置付け(Tax Position)と節税対策の再検討を行っております。スモール・ビジネスの場合、年度末ごとのタックス・プランニングでは、通常、事業支出控除の加速と所得の繰延べが中核となります。

Small Business Entities(合計年間総収入額が1000万ドル未満の事業、以下SBE)のみに適用される税優遇措置があるため、SBEは、より多様な方法を駆使してのタックス・プランニングが可能です。一般的に、SBEの要件を満たす場合は、どの優遇措置を利用したいかを年度毎に選択できます。2022/23年度は、SBEの税優遇措置の多くがMedium‐sized Business(合計年間総収入額が5000万ドル未満の事業、以下MSB)にも適用されます。

以下、すべての事業者にご検討いただける節税対策をいくつか紹介いたします。

 

控除額最大化-SBE以外の事業者

SBE以外の事業者は、以下の方法のいずれか、またはその組合せにより控除額を最大化させることができます。

 

経費の前払による節税対策 ― SBE以外

6月30日までに行った費用の前払いは、原則的にその経費を控除できます。また、SBE以外の納税者は、通常、以下の前払費用について全額控除申請できます。

  • 1,000ドル未満の支出
  • 「サービス契約」に基づく支出(例、給与または賃金)
  • 法定支出

注:MSBは、202371日以前の前払金を全額控除できる場合があります(下記参照)。

 

費用支出の加速(減価償却費を含む)

費用支出の加速とは、事業者が定期的に発生する費用の支払いを前倒しすることを指します。事業者は原則的に、発生主義による経費の計上が認められています。したがって、基本的には「2023年6月30日までに支払いを行わなければならない」という要件はありません(すなわち、費用が純粋に「発生」しているならば、原則的に控除可能となります)。

 

チェックリスト

加速可能な支出のチェックリストは以下のとおりです。

  • 修理費
  • メインテナンス費
  • 消耗品/部品
  • 広告費
  • フリンジベネフィット:不動産給付等、あらゆる給付を、2023年6月30日までに購入および提供することで費用支出を加速できます。
  • スーパーアニュエーション:6月30日までに拠出を行うことによって費用支出を加速できます。(6月30日の時点で実際に支払いが行われた額に限る。未払い分は含まれない。)

2022/23年度は、以上に加え6月30日までに初めて使用、もしくは使用可能な状態に設置された減価償却資産を加速償却することが出来ます。

  • 総売上高が50億ドル未満のSBE以外の事業者は、適格固定資産およびその改良費も全額損金算入することができます。

注:SBE以外の事業者は、資産ごとに全額費用化を選択することができます。

  • 全額費用化が適用されない場合、または選択しなかった場合、SBE以外の事業者は通常、以下の減価償却を損金算入することができます。
    • 1,000ドル以下の資産は低価額プールに区分し、2023年は75%、以降37.5%で減価償却できます。
    • その他の固定資産は購入費をATOによって定められた使用可能期間にわたって減価償却します。

 

未払支出

事業納税者(SBEを含む)は、支払いが行われていない場合でも、2023年6月30日時点での未払支出について、控除が認められます。以下の項目について、未払い費用が認められます。

  • 給与または賃金および賞与:2023年6月30日時点で従業員が労働を行ったが支払いが行われていない期間についての未払費用。
  • 利息:後払い利息分を未払い費用としての計上。
  • 手数料:従業員またはその他の外部者に支払うべき手数料。
  • 付加給付税(FBT):2023年7月が納税期限となっている2023年第4四半期のFBT分割予定納税を未払税金として計上できます。
  • 取締役報酬:会社が2023年6月30日までに取締役報酬を支払うことを確約している場合、税額控除の申請が可能です。

 

SBE 事業者の控除額最大化

SBEは費用の支出を早め(費用支出の加速)、控除可能な事業費用を前払いすることで、控除額を最大にすることができます(未払費用については上記を参照のこと)。

 

減価償却費の加速ーSBE事業者

簡易減価償却制度を利用するSBE納税者は以下の償却費の控除申請が可能です。

  • 金額に関係なく2023年6月30日までに初めて使用、もしくは使用可能な状態に設置された資産とその改良費の即時償却。

  注:SBE対象の簡易減価償却制度を使用するSBE事業者が減価償却資産の全額費用化の非適用を選択する場合は、まず簡易減価償却制度を非適用にし、その後、資産ごとに全額費用化の非適用を選択する必要があります。

  • 2023年6月30日までの課税年度末の簡易減価償却プールの残高を所得控除.することができます。

     注:SBE対象の簡易減価償却制度を使用するSBE納税者は、SBEジェネラルプールにおいて全額費用化をオプトアウトすることはできません。

 

費用の前払による節税対策(SBEMSB

12カ月以内の期間内(2024年6月30日以前に終了する年度内)に提供を受けるサービスへの前払費用で、その支払が2023年7月1日以前に行われた場合、2022/23年度に全額を損金算入できます。それ以外の前払費用については、SBE以外の事業者と同じ規則が適用されます。

例として、前払可能な費用には、以下が含まれます。

  • 賃料:事業所または事業用設備の賃料。
  • リース料:自動車やオフィス機器等の事業用品のリース料。
  • 利息:最大12カ月分の利息の前払いが可能であるか、貸出人とご確認ください。
  • 出張費
  • 研修費:2023年7月1日以降に実施される研修について
  • 事業用の購読料等

 

タックスリターンに必要な情報

タックスリターンのサポートをご依頼いただいた際には、以下の様な情報が必要になります。

  • 6月30日時点での棚卸の詳細。
  • 6月30日時点での債務者一覧(償却済みの不良債権一覧を含む)。 注:不良債権について税額控除の申請をするためには、6月30日以前に償却が行われていなければなりません。
  • 6月30日現在の債権者一覧。

注:本書に記載されたコメントの多くは一般的な性質のものであり、情報を実際に適用される場合は、情報の解釈や特定の状況への適用について個別に確認するため、専門的な助言を求めるべきです。